- コラム
奥歯を失ったまま放置していると、見た目や健康面に思わぬ影響が出ることがあります。
多くの人が「一時的には大丈夫だろう」と考えがちですが、実際には放置することで噛み合わせが悪化したり、顎の骨が吸収されて治療が難しくなることがあります。
この記事では、奥歯がないままの状態が続くことで生じるリスクやその後の影響について詳しく解説します。
早めの治療がなぜ重要なのか、そしてどんな治療方法があるのかを知ることで、未来の健康を守りましょう。
奥歯がないまま放置するリスク
奥歯がないままで放置すると、さまざまな問題が引き起こされる可能性があります。
以下に、主なリスクを説明します。
機能面
奥歯が欠けたまま放置すると、十分に食べ物を噛むことができず、消化不良や食生活の偏りが生じます。
さらに、残りの歯に過度な負担がかかり、噛み合わせが不均衡になり、顎関節症の原因にもなります。
咀嚼能力の低下
奥歯は食べ物をしっかりと噛み砕く重要な役割を担っています。
奥歯を失うことで、食べ物を十分に噛むことが難しくなり、消化不良を引き起こす可能性があります。
また、特定の食べ物を避けるようになり、食生活に偏りが生じることもあります。
他の歯への負担増加
奥歯が失われると、残りの歯がその役割を補おうと過度な負担を強いられます。
これにより、残存歯の摩耗や破損、寿命の短縮が進行する可能性があります。
噛み合わせの悪化
歯は互いに支え合って正しい位置に並んでいます。
奥歯が失われると、周囲の歯が空いたスペースに移動し、噛み合わせが悪くなることがあります。
顎関節への影響
噛み合わせの悪化は、顎の関節(顎関節)に負担をかけ、顎関節症を引き起こす可能性があります。
顎関節症は、顎の痛みや開口障害、頭痛などの症状を伴うことがあります。
健康面
歯がない部分が不衛生になり、歯周病や虫歯のリスクが増します。
また、骨吸収が進み、顔の形が変わることもあります。
食生活の偏りが生活習慣病や認知症のリスクを高める原因となるため、早期の治療が重要です。
歯周病のリスク増加
奥歯の抜けた部分は清掃が難しくなり、プラークや歯石が蓄積しやすくなります。
これにより、歯周病が進行するリスクが高まります。
虫歯のリスク増加
歯が移動することで、歯と歯の間に隙間ができ、そこに食べ物が挟まりやすくなり、虫歯のリスクも高まります。
骨の吸収
歯を支えていた骨は、歯がなくなると刺激を受けなくなり、徐々に吸収されていきます。
この骨の吸収は、将来的なインプラント治療を難しくする要因となります。
生活習慣病や認知症リスクの増加
噛めないことで柔らかい炭水化物中心の食生活になりやすく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病リスクが上がると指摘されています。
また、噛むことが認知機能の維持に重要であることが示唆されており、認知症のリスクも増加する可能性があります。
審美面
奥歯は直接見える部分ではありませんが、噛み合わせや他の歯のバランスが崩れることで、顔貌が変わることがあります。
奥歯がないと骨が痩せて顔の輪郭が変化し、老けて見えることがあります。
関連記事:歯がないとどうなる?考えられるリスクと対策方法
奥歯がないままの人におすすめの治療法
奥歯がないまま放置すると、噛み合わせや健康に悪影響を及ぼすことがあります。
失われた奥歯を補うための治療法として、入れ歯(義歯)、ブリッジ、インプラントがあります。
各治療法にはそれぞれメリットとデメリットがあり、患者の状況に応じて選択することが重要です。
入れ歯(義歯)
入れ歯は取り外し可能な人工歯で、安価に治療を受けることができます。
特に、保険適用のプラスチック製入れ歯など、低コストでの選択肢も豊富です。
しかし、噛む力が天然の歯と比べて弱く、長時間の使用で不快感が生じることもあります。
また、入れ歯を使用すると、食べ物が歯と歯茎の間に挟まりやすくなるため、清掃やケアをこまめに行う必要があります。
ブリッジ
次に、ブリッジは隣接する歯を利用して失われた歯を補う方法です。
ブリッジは安定感があり、噛み心地が入れ歯よりも自然です。
しかし、隣接する歯を削らなければならず、その歯に負担をかけるリスクがあります。
また、ブリッジは奥歯の欠損部分を完全に補うわけではないため、奥歯の噛む力の回復には限界があるかもしれません。
治療期間は比較的短く、手術が不要であるため、すぐに治療が完了します。
インプラント
インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込んで、人工歯を取り付ける治療法です。
見た目や噛む力が天然の歯に非常に近いため、最も自然な感覚を得られる治療法です。
インプラントは安定性が高く、長期間使用することができるため、他の治療法に比べて費用や治療期間がかかります。
しかし、顎の骨に手術を行う必要があります。
インプラントは噛む力が強化され、食事がしやすくなるため、生活の質を向上させる効果があります。
関連記事
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奥歯がないままの状態に関するよくある質問
奥歯を抜歯したままでも問題ない?
奥歯を抜歯したまま放置するのはおすすめできません。
抜歯後に治療を行わないと、噛み合わせが崩れ、顎の骨が吸収される可能性があります。
これにより、歯並びが悪化し、周囲の歯への負担が増すことで、将来的に他の歯の寿命を縮めることにもなりかねません。
また、噛み合わせが悪くなることで顎関節症などの問題が生じることもあります。
適切な治療を受けることで、リスクを避け、快適な口腔内環境を保つことができます。
奥歯がなくても大丈夫な歯はある?
奥歯がなくても一時的には生活に支障を感じない場合もありますが、長期的には問題が発生する可能性があります。
奥歯は食べ物をしっかり噛み砕く役割を担っているため、奥歯が欠けると消化不良や噛み合わせの不調が引き起こされます。
特に奥歯が1本抜けただけでは、短期間での問題は少ないかもしれませんが、他の歯に負担がかかり、最終的には全体のバランスを崩す原因となります。
歯科医師に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
奥歯がないと顔は変わりますか?
奥歯がない状態が続くと、顔の形に変化が生じる可能性があります。
奥歯がないと、顎の骨が吸収されやすくなり、頬がこけたり、顔が歪んだりすることがあります。
特に長期間放置すると、顔全体の輪郭が変わり、老けて見えることもあります。
顔貌の変化を避けるためにも、奥歯が欠けたまま放置せず、早期に適切な治療を受けることが推奨されます。
奥歯がないまま放置せず早めの治療がおすすめ
奥歯を失ったまま放置することは、後々大きな問題を引き起こす可能性があるため、早期に治療を受けることが非常に重要です。
治療を先延ばしにすると、治療方法の選択肢が限られ、治療の難易度や費用が増すことがあります。
奥歯が欠けた状態で長期間放置すると、隣接する歯が移動したり、顎の骨が吸収されることにより、インプラントや入れ歯の設置スペースがなくなる場合があります。
将来的に治療が難しくなり、より高度な治療が必要になることがあります。
また、噛み合わせや顔のバランスにも影響を及ぼし、他の歯に負担をかけることで、口腔内の健康に悪影響を及ぼします。
できるだけ早く歯科医院で相談し、インプラントやブリッジ、入れ歯など、最適な治療方法を選ぶことが、長期的に見て健康的で経済的です。
まとめ
奥歯がないまま放置すると、噛み合わせの悪化や顎の骨の吸収、隣接歯への負担増加など、さまざまな問題が生じる可能性があります。
他の歯に不調が出たり、最終的には治療が難しくなることもあります。
また、見た目や顔のバランスにも影響を与え、老けて見える原因にもなることがあります。
早期に歯科医師に相談し、インプラントやブリッジ、入れ歯など適切な治療を受けることで、これらのリスクを避け、健康的な口腔内を維持することができます。

監修者
おくだ歯科 院長
奥田 幸祐(オクダ コウスケ)
プロフィール
歯科医師として歩みを始めたときから、インプラント治療における様々な症例に対応し、他院で治療ができなかった難症例も数多く治療してきました。自身が日々研鑽を積むだけでなく、多くのドクターにインプラント治療の指導も行っています。この豊富な経験と実績で、皆様に寄り添い難症例にも対応してまいりますので、お悩みの方は是非一度当院にご相談ください。
経歴&職歴
- 平成17年:朝日大学 歯学部 首席で卒業
- 平成17年〜24年:付属病院、開業医勤務
- 平成25年:おくだ歯科・矯正歯科 可児市広見にて開業
- 平成27年:医療法人化 医療法人ALESおくだ歯科・矯正歯科
- 平成27年:厚生労働省認定 歯科医師 臨床研修指導医 取得
- 令和5年:日本顎咬合学会 嚙み合わせ認定医 取得
- 令和5年:特定非営利活動法人 放射線学会 CBCT認定医 取得