- コラム
目次
「失った歯を補う治療法を知りたい」
「各治療の特徴や費用、治療期間を知りたい」
1本だけ歯がない方で、上記のお悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
歯を補う治療法には、インプラント・ブリッジ・部分入れ歯があります。
この記事では各治療法のメリットやデメリットを解説しています。
各治療法の費用相場や治療期間も比較しているため、ぜひ最後までご覧ください。
1本だけ歯がない状態を放置するリスク
1本だけ歯がない状態を放置することで起こり得るリスクは、以下の4つです。
- 歯並びの悪化
- 残っている歯への負担増大
- しっかり噛めなくなることによる胃腸への負担と栄養の偏り
- 発音への影響と顔の印象の変化
1つずつ解説します。
歯並びの悪化
歯が1本ないまま放置すると、歯並びが乱れるリスクがあります。これは歯を失ってできた隙間に周囲の歯が倒れ込んだり、向かい側の歯が伸びてきたりするのが原因です。歯並びの悪化は、見た目が悪くなるだけでなく、虫歯や歯周病のリスクを高めます。
今後の治療で、矯正や補綴など複数の処置が必要になる可能性もあるため、早期治療が大切です。
残っている歯への負担増大
1本でも歯が抜けると、残された歯に負担がかかります。噛む力がうまく分散されず、一部の歯に集中してしまうためです。とくに失った歯の隣や向かいの歯には、強い力がかかり、欠けたり擦り減ったりするリスクがあります。また、歯を支える骨が弱くなったり、歯茎が下がったりする場合も。
こうした負担の蓄積によって、残っている健康な歯の寿命を縮めてしまうため、「1本だけだから」と歯が抜けた状態を放置せず、早めに治療をおこないましょう。
しっかり噛めなくなることによる胃腸への負担と栄養の偏り
歯が1本ないだけでも、食べ物をよく噛めなくなり、胃腸への負担が増えるリスクがあります。うまく咀嚼できないまま飲み込むと、消化に時間がかかり、胃もたれや便秘の原因にもなりかねません。
また、硬い物を避けるようになり、食事の栄養が偏ってしまう場合もあります。野菜やたんぱく質不足が続くと、体調不良や免疫力の低下を招く場合もあるため、注意が必要です。
発音への影響と顔の印象の変化
歯が1本ないと、発音や見た目に影響が出るリスクがあります。前歯が抜けた場合、息がもれて「サ行」がうまく話せなくなる場合があります。また、歯を失った部分の骨が痩せて、口元がしぼんで見えてしまい、実年齢よりも老けて見える場合も。
発音や見た目に悪影響をきたさないためにも、早めに歯科医師に相談しましょう。
関連記事
・奥歯がないままの状態が続くとどうなる?
・前歯がないまま放置するとどうなる?原因や治療法を徹底解説
歯がなくなる原因
歯がなくなる原因として考えられるのは、以下の3つです。
- 歯周病
- 虫歯
- 外傷による破損
それぞれご紹介します。
歯周病
歯周病が進行すると、歯を支える骨が失われて歯が抜けてしまいます。歯周病の初期の段階は、痛みや腫れなどの自覚症状が少ないです。気づかずに放置すると、歯茎が痩せ細り、歯がグラつき始め、最終的には自然に歯が抜け落ちます。
ほかの歯への悪影響を防ぐために、抜歯が必要なため、歯を失ってしまうのです。
虫歯
虫歯が進行すると、最悪の場合、抜歯が必要になります。虫歯は、はじめは小さな穴でも、放っておくと神経にまで到達し、激しい痛みを引き起こす場合があります。そのまま放置した場合、歯の根に膿がたまり、顎骨に炎症が広がるおそれも。
虫歯によって歯の大部分が崩れると、詰め物では治せないため、抜歯によって歯を犠牲にせざるを得ません。
外傷による破損
外傷によって歯が破損した場合、抜歯が必要になる場合があります。スポーツや転倒などで歯に強い力が加わると、歯が折れたり、欠けたりするケースがあります。
とくに歯の根が縦に割れる「歯根破折」がおきると、現代の治療では歯を残すのは困難です。割れた部分から細菌が入り、骨に炎症を起こす前に抜歯するのが望ましいとされています。
歯が1本ない場合の治療法
歯が1本ない場合の治療法は、以下の3つです。
- インプラント
- ブリッジ
- 部分入れ歯
それぞれの治療法をご紹介します。
インプラント
インプラントは、顎骨に人工歯根を埋めて、失った歯を補う治療法です。自分の歯のような見た目と噛み心地が特徴であり、ブリッジや部分入れ歯と違って、周囲の歯に負担をかけません。
一方、インプラントは外科手術が必要なため体への負担がかかり、全身疾患を患っている方には治療が難しいと判断される場合も。
ブリッジ
ブリッジは、両隣の歯を削って支えにし、連結した人工歯を被せる治療法です。固定式なため部分入れ歯よりも安定感があり、違和感が少なく話しやすいのが特長です。
ただし、健康な歯を削らなければならないため、将来的にその歯の寿命を縮めてしまうリスクがあります。
部分入れ歯
部分入れ歯は、残っている歯に金属のバネをかけて人工歯を支える方法です。外科的な処置がいらず、保険適用で費用も安価なため、手軽に始められる治療です。健康な歯をほとんど削らないため負担も少ないです。
一方、部分入れ歯は、話すときに違和感があったり、噛む力が弱かったりする場合もあります。食後は毎回取り外して洗う必要があるため、こまめなお手入れが必要です。
【早見表】治療法ごとの特徴を一覧で比較
以下は、各治療法の特徴を表にまとめたものです。
インプラント |
ブリッジ |
部分入れ歯 |
|
見た目 |
インプラントは、ブリッジや部分入れ歯よりも、天然の歯のような自然な仕上がりになる。 |
インプラントには劣るが、部分入れ歯よりも比較的自然な仕上がりになる。 |
金属の留め金(クラスプ)が見える場合があり、インプラントやブリッジと比べて審美性は劣る。 |
噛み心地 |
自分の歯と同様に、しっかり噛める。 |
インプラントには劣るが、部分入れ歯よりもしっかり噛める。 |
天然の歯の20〜30%程度は噛める。(硬いものは食べにくい) |
周りの健康な歯への影響 |
なし。 健康な歯を削る必要がない。 |
あり。 土台にするために、両隣の健康な歯を削る必要がある。 |
あり。 留め金をかける歯に負担がかかる。 |
治療期間 |
3カ月~1年程度 |
1カ月~2カ月程度 |
2週間~1カ月程度 |
外科手術の有無 |
必要 |
不要 |
不要 |
費用 |
1本あたり30万円〜50万円程度。(自由診療) |
2万円〜3万円程度。(保険適用) 10万円~40万円程度。(自由診療) |
5千円~1万5千円程度。(保険適用) 15万円以上。(自由診療) |
手入れのしやすさ・方法 |
天然の歯と同様の歯磨きでお手入れができる。 |
橋の下の部分に汚れが溜まりやすく、特殊な歯間ブラシを使った歯磨きが必要になる。 |
毎日取り外して、専用のブラシや洗浄剤で清掃する必要がある。 |
関連記事:歯がないところに歯を入れる方法とは?治療法の選び方と費用、注意点を解説
インプラント・ブリッジ・部分入れ歯のメリット・デメリット
以下は、インプラント・ブリッジ・部分入れ歯の各メリットとデメリットです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
インプラントのメリット・デメリット
インプラントは、周囲の歯を傷つけずに治療ができ、自然な見た目と噛み心地を手に入れられるのがメリットです。顎骨が痩せにくいといったメリットもあります。
ただし、外科手術が必要で、治療期間がブリッジや部分入れ歯と比べて長いです。また、自由診療のため、金銭面で負担がかかります。
ブリッジのメリット・デメリット
ブリッジは、インプラントよりも治療期間が短く、部分入れ歯よりも話すときの違和感や見た目への変化が少ないのがメリットです。保険適用でおこなうブリッジの場合、費用も抑えられます。
一方で、両隣の健康な歯を削って支えにする必要があり、将来的に支えにしている歯の寿命を縮めるリスクがあります。
部分入れ歯のメリット・デメリット
部分入れ歯は、インプラントやブリッジよりも費用が安く、外科手術も不要です。
一方、インプラントやブリッジと比べて、装着時に違和感が出やすく、噛む力や審美性に劣ります。食後には取り外して洗う必要があり、日々の手入れを習慣にしなければなりません。
歯を1本補う治療にかかる費用と期間
治療法によって、かかるお金と時間は異なります。以下では、インプラント・ブリッジ・部分入れ歯ごとの費用相場と治療期間の目安、そして知っておきたい保険の知識を詳しく解説します。
治療法別|費用相場の比較
治療方法によって費用は異なり、保険が使える部分入れ歯は1本5千円ほどから作れるため、費用をおさえたい方におすすめです。
ブリッジは保険適用で2万円ほどから可能ですが、見た目を重視して自由診療を選ぶと10万円以上かかる場合もあります。
一般的に、インプラントは保険が使えず、1本30万円〜50万円が相場です。
治療ごとに金額の幅があるため、事前に歯科医院でしっかり確認しましょう。
治療法別|治療期間の目安
治療の期間は方法によって異なり、部分入れ歯やブリッジは1カ月〜2カ月程度で完了する場合が多く、短期間で治療を終えたい方に向いています。
インプラントは骨としっかり結合するまでの期間が必要で、3カ月〜1年ほどかかる場合があります。また、虫歯や歯周病がある場合は、先に治療をおこなう必要があり、全体の期間が長くなる場合も。
治療計画は歯科医師とよく相談するのが重要です。
保険適用と自由診療の違い
保険と自由診療では選べる治療の内容が異なり、保険適用の治療は、最低限の噛む機能を取り戻すのを目的としており、材料や方法に制限があります。そのぶん費用は1割〜3割の自己負担で済むため、経済的には助かります。
自由診療は見た目の美しさや使いやすさまで追求できる反面、全額自費での支払いが必要です。インプラントは自由診療のみですが、ブリッジと部分入れ歯は保険か自由診療を選べます。
医療費控除は使える?費用を抑える方法
歯を補う治療費を抑えるには、医療費控除やデンタルローンの利用が有効です。医療費控除は、年間10万円以上の医療費を支払った場合に確定申告をおこなうことで、税金の一部が戻ってくる制度です。通院のための交通費も対象になる場合があります。
また、歯科医院によっては、分割払いが可能なデンタルローンを用意しているところもあります。費用面だけでなく、治療内容や保証内容も確認し、自分に合った歯科医院を選びましょう。
どの治療法を選ぶべき?場所・状況別の選び方のポイント
以下は、治療法を選ぶ際のポイントを、場所・状況別に分けたものです。
- 見た目が気になる「前歯」の場合
- 強い力がかかる「奥歯」の場合
- 周りの歯を削りたくない場合
- 外科手術を避けたい・治療期間を短くしたい場合
1つずつ解説します。
見た目が気になる「前歯」の場合
前歯を1本失った場合は、見た目の自然さが特長のインプラントが最適です。インプラントは人工歯根を埋め込むため、見た目が本物の歯に近く、周囲に気付かれにくいです。
ブリッジもセラミック素材のものを使用した場合、白くて美しい仕上がりになりますが、健康な隣の歯を削る必要があります。
部分入れ歯は費用が安くても、金属のバネが目立ちやすいため、前歯にはあまり向いていません。
前歯の治療や見た目を重要視される方は、インプラントがおすすめです。
強い力がかかる「奥歯」の場合
奥歯を失った場合は、噛む力と耐久性に優れているインプラントが向いています。インプラントは顎骨と結合して人工歯を支えているため、硬いものも安心して噛めます。
ブリッジもよく噛めますが、支えとなる歯に負担がかかりやすく、将来的なトラブルの原因になる場合も。
部分入れ歯は安価ですが、噛む力が弱く外れやすいため、奥歯のような力のかかる場所にはやや不向きです。
強い力がかかる奥歯の治療は、インプラントがおすすめです。
周りの歯を削りたくない場合
健康な周囲の歯を削りたくない方には、インプラントがおすすめです。インプラントはほかの歯を削らずに、失った部分だけを治療できます。
ブリッジは必ず両隣の歯を削って支えにするため、健康な歯を傷つけてしまいます。
部分入れ歯は削る量が少なくて済みますが、バネをかける歯に負担がかかるのがデメリットです。
周囲の歯に負担をかけたくない方は、インプラントを検討しましょう。
外科手術を避けたい・治療期間を短くしたい場合
外科手術を避けたい方や、短期間で治療を終えたい方には、ブリッジまたは部分入れ歯が向いています。ブリッジや部分入れ歯の治療は歯茎を切る外科手術が不要で、2週間〜2カ月ほどで完了できます。
インプラントは手術が必要で、治療にも3カ月〜1年以上かかるため、スピード重視の方には向いていません。
外科手術を避けて短期間で治療を終えたい方は、ブリッジや部分入れ歯がおすすめです。
まとめ
歯が1本ない状態を放置するのは、将来的に噛み合わせの悪化や見た目の変化、周囲の歯への悪影響になりまります。
この記事で紹介したように、インプラントやブリッジ、部分入れ歯にはそれぞれ特徴があり、ご自身の希望や生活に合った治療法を選びましょう。
失った歯の治療法でお悩みの方は、お気軽に歯科医師へご相談ください。

監修者
おくだ歯科 院長
奥田 幸祐(オクダ コウスケ)
プロフィール
歯科医師として歩みを始めたときから、インプラント治療における様々な症例に対応し、他院で治療ができなかった難症例も数多く治療してきました。自身が日々研鑽を積むだけでなく、多くのドクターにインプラント治療の指導も行っています。この豊富な経験と実績で、皆様に寄り添い難症例にも対応してまいりますので、お悩みの方は是非一度当院にご相談ください。
経歴&職歴
- 平成17年:朝日大学 歯学部 首席で卒業
- 平成17年〜24年:付属病院、開業医勤務
- 平成25年:おくだ歯科・矯正歯科 可児市広見にて開業
- 平成27年:医療法人化 医療法人ALESおくだ歯科・矯正歯科
- 平成27年:厚生労働省認定 歯科医師 臨床研修指導医 取得
- 令和5年:日本顎咬合学会 嚙み合わせ認定医 取得
- 令和5年:特定非営利活動法人 放射線学会 CBCT認定医 取得